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東京高等裁判所 平成10年(行ケ)381号 判決 1999年12月27日

原告

東陶機器株式会社

代表者代表取締役

【A】

原告

小糸工業株式会社

代表者代表取締役

【B】

上記両名訴訟代理人弁理士

【C】

【D】

被告

特許庁長官【E】

指定代理人

【F】

【G】

【H】

【I】

主文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告ら

特許庁が、平成9年審判第21032号事件について、平成10年10月30日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告らは、昭和63年8月29日、名称を「衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構」とする考案につき実用新案登録出願をした(実願昭63ー112979号)が、平成9年8月20日に拒絶査定を受けたので、同年12月16日、これに対する不服の審判の請求をした。

特許庁は、同請求を平成9年審判第21032号事件として審理したうえ、平成10年10月30日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年11月11日、原告らに送達された。

2  考案の要旨

(1)  請求項1項に記載された考案(以下「本願考案1」という。)の要旨

ノズルシリンダに対してノズルロッドを摺動自在に内挿し、ノズルロッド往復駆動手段を介して該ノズルロッドを収納位置と洗浄位置に出退変位する構造にすると共に、

該ノズルシリンダを支持ブラケットに対して軸方向へ摺動自在に支承し、該ノズルシリンダと支持ブラケット間にノズルシリンダ往復駆動手段を構成し、

該ノズルシリンダ往復駆動手段を中央制御回路を介して手動又は自動的に駆動し、突出したノズルロッドの噴出孔の位置を微調節し、

該ノズルロッドの噴出孔を、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で進退振動し得るように構成したことを特徴とする衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構。

(2)  請求項2項に記載された考案(以下「本願考案2」という。)の要旨

前記支持ブラケットとノズルシリンダが、ノズルシリンダの両側に突設した摺動用リブを支持ブラケットに構成したガイド溝と嵌合した摺動構造に成る請求項1記載の衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構。

(3)  請求項3項に記載された考案(以下「本願考案3」という。)の要旨

前記ノズルシリンダ往復駆動手段が、支持ブラケットに固設した制御モータと、歯車式、リンク式又はカム式駆動伝達機構を介してノズルシリンダと連結した構造に成る請求項2記載の衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構。

3  審決の理由の要点

審決は、別添審決書写し記載のとおり、本願考案1~3が、特開昭62ー296023号公報(以下「引用例1」という。)及び特開昭60ー168835号公報(以下「引用例2」という。)にそれぞれ記載された各考案に基づいて、当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないとした。

第3  原告ら主張の審決取消事由の要点

審決の理由中、本願考案1~3の要旨の認定、引用例1の記載事項の認定のうち、<1>~<3>の部分(審決書4頁1行~6頁10行)並びに「引用例1に記載された第2の考案」及び「引用例1に記載された第3の考案」についての部分(同8頁14行~9頁末行)、引用例2の記載事項の認定、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との対比のうち、相違点(1)の認定の部分(同14頁5~11行)、本願考案2と「引用例1に記載された第2の考案」との対比及び相違点(2)についての判断、本願考案3と「引用例1に記載された第3の考案」との対比のうち、一致点の認定を除く部分は認める。

審決は、引用例1に記載された考案の技術事項を誤認して、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との一致点の認定を誤り(取消事由1)、また、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との相違点(1)についての判断を誤り(取消事由2)、さらに本願考案2、3と「引用例1に記載された第2の考案」及び「引用例1に記載された第3の考案」との対比判断を誤った(取消事由3)結果、本願考案1~3が、引用例1、2に記載された各考案に基づいて、当業者が極めて容易に考案をすることができたとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  取消事由1(本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との一致点の認定の誤り)

(1)  審決は、引用例1の記載に関し、「ノズルロツド16、16′のノズル孔16a、16′aが微調節した微調節位置を中心にして(洗浄水の噴射中にボデイを所定範囲内で往復動させるのであるから、微調節位置をはずして往復動させることは技術常識上有り得ず、往復動の中心が微調節位置であることは明らかであるものと認められる)所定の振幅で前後方向に往復動される・・・ことは明らかであるものと認められる」(審決書7頁1~11行)とし、「引用例1に記載された第1の考案」が、「ノズルロッド16、16′のノズル孔16a、16′aを、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で前後方向に往復動し得るように」(同8頁6~8行)構成したものとしたうえで、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」とが、「ノズルロッドの噴出孔を、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で進退振動し得るように構成した衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構」(同13頁末行~14頁3行)である点において一致すると認定した。

しかしながら、「引用例1に記載された第1の考案」が、「ノズルロッド16、16′のノズル孔16a、16′aを、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で前後方向に往復動し得るように」構成したとする認定は誤りであり、したがって、上記認定を前提とする上記一致点の認定部分も誤りである。

すなわち、「引用例1に記載された第1の考案」は、使用時にノズルロッド16、16′が水圧によって完全に便器内へ突出する構造であるから、微調節位置におけるノズルロッド16、16′のノズル孔16a、16′aの往復動は、技術的に見て、シリンダボディ27の往復動によって行われるものである。したがって、該往復動の振幅は、ラック28とピニオン29の残余可動(噛合)範囲に限定されることになるため、基準となる微調節位置から前進側又は後退側に移動できない場合も生じる。

例えば、引用例1(甲第4号証)の第1図において、同図上実線で示されるノズルロッド収納状態から、ノズルロッド16が、距離S′のストロークをするためには、ノズルロッド16自身が距離Sのストロークをし、シリンダボデイ27が距離Bのストロークをすることになるが、シリンダボディ27を距離B(図面上9㎜)だけストロークさせるには、ピニオン29を時計回りに回転させ、ラック28をノズルロッド収納状態におけるピニオンに対する位置から図面上の右下方向に距離B(9㎜)だけ移動させなければならないところ、その移動後には、図面上ピニオン29がラック28の最端部に位置することになり、ラック28とピニオン29の同方向への残余可動(噛合)範囲は零となって、それ以上ピニオン29を時計回りに回転させてシリンダボデイ27を前進側に移動させることが不可能となる。すなわち、ノズルロッド16が、距離S′のストロークをした状態において、ノズルロッド16の先端(ノズル孔16a)を前後方向に往復動させるためには、シリンダボディ27がそれ以上前進側に移動し得ないのであるから、ノズルロッド16が距離S′のストロークをしたときのノズルロッド16の先端(ノズル孔16a)の位置である微調節位置を端部として往復動させるしかない。したがって、「引用例1記載された第1の考案」においては、ノズルロッド16、16′が距離S′のストロークした状態となる場合では、ノズル孔16a、16′aの前後方向の往復動は、前記微調節位置を中心としたものではないことが図面上明らかである。

したがって、「引用例1に記載された第1の考案」が「ノズルロッド16、16′のノズル孔16a、16′aを、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で前後方向に往復動し得るように」構成したということはできない。

(2)  審決は、「引用例1に記載された第1の考案」の「ラツク28、ピニオン29、パルスモータ30からなる往復駆動手段」(審決書12頁13~15行)が、本願考案1の「ノズルシリンダ往復駆動手段」(同13頁3~4行)に相当するものとして、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」とが、「ノズルシリンダ往復駆動手段を手動により駆動し、突出したノズルロッドの噴出孔の位置を微調節」(同13頁17~19行)する点において一致すると認定した。

しかしながら、「引用例1に記載された第1の考案」においては、ノズルロッド16、16′を「肛門洗浄位置」まで(甲第4号証第1図のストロークの距離S)突出させた後に、必要に応じてシリンダボディ27をさらに「ビデ洗浄位置」まで(同図のストロークの距離B、S+B=S′)突出させ、それぞれの位置での微調節位置の調整と往復動を行う構造のものであるのに対し、本願考案は、ノズルロッド往復駆動手段とは独立したノズルシリンダ往復駆動手段によって微調節位置の調整と往復動を行わせる構造であるから、「引用例1に記載された第1の考案」の「ラツク28、ピニオン29、パルスモータ30からなる往復駆動手段」が、本願考案1の「ノズルシリンダ往復駆動手段」に相当するとの審決の認定は誤りであり、したがって、上記認定を前提とする上記一致点の認定部分も誤りである。

2  取消事由2(本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との相違点(1)についての判断の誤り)

審決は、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との相違点(1)、すなわち、「ノズルシリンダ往復駆動手段の駆動が、前者(注、本願考案1)においては、中央制御回路を介して行われる、のに対し、後者(注、「引用例1に記載された第1の考案」)においては、中央制御回路を介して行われるのか否か明らかではない」(審決書14頁5~9行)点につき、「引用例2に記載された考案の『チヤーム機能部4』、『洗浄ノズル13』、『本体20内』、『シヤワー』、『進退』、『制御部29』、『個別操作キー部22』、『自動操作キー部21』、『自動式局部洗浄装置』及び『洗浄ノズル』がそれぞれの機能に照らし、それぞれ前者(注、本願考案1)の『ノズルロッド往復駆動手段』、『ノズルロッド』、『収納』、『洗浄』、『出退』、『中央制御回路』、『手動』、『自動的』、『衛生洗浄装置』及び『噴射ノズル』に相当するものと認められるから、引用例2に記載された考案には、往復駆動手段の駆動を中央制御回路を介して行う構成が備わっているものと認められる。ところで、引用例2に記載された考案を後者(注、「引用例1に記載された第1の考案」)に適用して、後者の往復駆動手段を中央制御回路を介して駆動するように改変することは、そもそも、種々の技術分野において、駆動手段の駆動を中央制御回路を介して行うようにすることがきわめて普通の技術的事項であり、かつ、後者も、引用例2に記載された考案も、共に、衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構に関するものであって技術分野を同じくすることからすれば、当業者が格別困難性を要することではないというべきである。・・・前記相違点(1)の前者の効果が後者及び引用例2に記載された考案の各効果の総和以上の格別なものとも認められない。」(審決書14頁14行~16頁17行)と判断したが、それは誤りである。

すなわち、引用例2記載の考案の演算部26に電気的に接続された「メモリ部25には、洗浄機能部15、乾燥機能部3、及びチヤーム機能部4を、夫々個別に駆動する手順と、4種類の洗浄機能部15・乾燥機能部3・チヤーム機能部4の組合わせ手順、及びその駆動時間が配慮されている」(甲第5号証3頁左上欄9~13行)シーケンス制御がなされているにすぎず、引用例2記載の考案は、本願考案1のような、ノズルシリンダからノズルロッドを出退変位させるノズルロッド往復駆動手段及びノズルシリンダの支承位置を変更するノズルシリンダ往復駆動手段を有するとともに、ノズルシリンダ往復駆動手段を中央制御回路より出力される制御信号によって駆動する構成のものとは異なっており、本願考案1と同様の機能を有するものでもなく、同様の作用効果を生じるものでもない。

したがって、引用例2記載の考案を、単純に「引用例1に記載された第1の考案」に適用しても、ノズルシリンダ往復駆動手段を使用者の操作により駆動して、突出したノズルロッドの噴出孔の位置を使用者の操作に基づいた量だけ移動させるマニュアル調節と、突出したノズルロッドの噴出孔の位置を予め記憶されている量だけ移動させる自動調節との何れのノズル位置微調節をも行い得るという本願考案1を構成することはできない。

なお、仮に同一の技術分野に属するものであっても、それぞれの技術において、独自の制御方法、駆動方法に基づいて中央制御回路を構成し、それによって、先行技術に比較して優れた機能や作用効果を発生させるような技術を開発することは、技術の発展・進歩を促すうえで重要な意義を有するものであり、単純に用語上の同一性からその技術内容も同一であるとしたり、選択の余地のない単なる設計事項であるとしたり、本願考案1の効果が引用例1及び引用例2に記載された考案の各効果の総和以上の格別なものは認められないと判断することは、短絡的発想であって、誤りである。

3  取消事由3(本願考案2、3と「引用例1に記載された第2の考案」及び「引用例1に記載された第3の考案」との対比判断の誤り)

審決は、本願考案2と「引用例1に記載された第2の考案」との対比判断において、「両者は、前記した相違点(1)は別にして、『前記支持ブラケットとノズルシリンダが、両側に設けられた摺動用リブとガイド溝が嵌合した摺動構造に成る衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構』である、点において一致し、摺動用リブとガイド溝を設ける位置が逆になっている、点において相違している(以下、相違点(2)という)ものと認められる。・・・この相違点(2)に格別考案はないというべきである。」(審決書17頁11行~18頁8行)と認定判断したが、本願考案2は、あくまで本願考案1を前提として構成されるものであり、単に、摺動用リブとガイド溝の構造に関する考案ではないから、全体として考案の構成を把握すべきものであるところ、上記のとおり、本願考案1は、引用例1、2に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案登録が認められるべきであるから、本願考案2についても実用新案登録が認められるべきである。

また、審決は、本願考案3と「引用例1に記載された第3の考案」との対比判断において、「両者は、前記した相違点(1)及び(2)は別にして、一致するものと認められる。」(審決書19頁6~8行)と認定判断したが、同様に、本願考案1、2は、実用新案登録が認められるべきであるから、本願考案3についても実用新案登録が認められるべきである。

第4  被告の反論の要点

審決の認定・判断は正当であり、原告ら主張の取消事由は理由がない。

1  取消事由1(本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との一致点の認定の誤り)について

原告らは、引用例1(甲第4号証)の第1図おけるBの図面上の寸法(9㎜)と、ラック28及びピニオン29の噛合範囲の図面上の寸法を測定し、該各寸法を根拠として、「引用例1記載された第1の考案」において、ノズルロッド16、16′が距離S′のストロークをした状態となる場合では、ノズル孔16a、16′aの前後方向の往復動が前記微調節位置を中心としたものではないことが図面上明らかであるので、「引用例1に記載された第1の考案」が「ノズルロッド16、16′のノズル孔16a、16′aを、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で前後方向に往復動し得るように」構成したものであるとの審決の認定が誤りであり、該認定に基づく、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との一致点の認定も誤りであると主張する。

しかしながら、引用例1の第1図は、特許出願をするために作成した図面であって、技術思想を理解し易いように記載されているものであるが、設計図面等とは異なり、厳密な寸法によって記載されているわけではない。ラックの寸法を、肛門洗浄及びビデ洗浄を適切に行えるような長さとすることは、当然の設計事項である。

そして、引用例1には、「肛門洗浄およびビデ洗浄の際に、パルスモータ30を所定の周期でもって往復回動させることにより、ボデイ25を前後方向に往復動せしめることにより、被洗浄部位の範囲を拡大することも出来る」(審決書5頁6~10行)と記載があるから、審決が「洗浄水の噴射中にボディを所定範囲内で往復動させるのであるから、微調節位置をはずして往復動させることは技術常識上有り得ず、往復動の中心が微調節位置であることは明らかであるものと認められる」とし、「引用例1記載された第1の考案」が「ノズルロッド16、16′のノズル孔16a、16′aを、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で前後方向に往復動し得るように」構成したものであるとした審決の認定に誤りはなく、この認定に基づく一致点の認定にも誤りはない。

2  取消事由2(本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との相違点(1)についての判断の誤り)について

原告らは、引用例2記載の考案が、本願考案1のような、ノズルシリンダからノズルロッドを出退変位させるノズルロッド往復駆動手段及びノズルシリンダの支承位置を変更するノズルシリンダ往復駆動手段を有するとともに、ノズルシリンダ往復駆動手段を中央制御回路より出力される制御信号によって駆動する構成のものとは異なっており、本願考案1と同様の機能を有するものでもなく、同様の作用効果を生じるものでもないから、引用例2記載の考案を、単純に「引用例1に記載された第1の考案」に適用しても、本願考案1を構成することはできないと主張し、さらに、本願考案1の効果が引用例1及び引用例2に記載された考案の各効果の総和以上の格別なものは認められないと判断することは、短絡的発想であって誤りであるとも主張する。

しかしながら、引用例2記載の考案は、「往復駆動手段の駆動を中央制御回路を介して行う構成が備わっているもの」(審決書15頁8~9行)であるところ、種々の技術分野において、駆動手段の駆動を中央制御回路を介して行うようにすることは極めて普通の技術的事項である。

さらに、通常の場合には、同一の技術分野に属するものであれば、あるものの技術を他のものに適用することに、格別の技術的困難性はないところ、引用例1、2に記載の考案は、ともに衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構に関するものであって、同一の技術分野に属するものであるから、「引用例1に記載された第1の考案」に引用例2記載の構成を適用することに格別の困難性はないものである。そして得られる効果についても、引用例1及び引用例2に記載された各考案の効果の総和以上の格別なものではない。

したがって、審決の相違点(1)における判断に誤りはない。

3  取消事由3(本願考案2、3と「引用例1に記載された第2の考案」及び「引用例1に記載された第3の考案」との対比判断の誤り)について

審決が、本願考案2と「引用例1に記載された第2の考案」との対比判断及び本願考案3と「引用例1に記載された第3の考案」との対比判断において、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との対比判断の内容を重複して記載することを避けたにすぎないことは、審決の記載上明白であり、本願考案2、3についても、本願考案1を前提として、全体の考案の把握を行っている。そして、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との対比判断に誤りはないから、本願考案2と「引用例1に記載された第2の考案」との対比判断及び本願考案3と「引用例1に記載された第3の考案」との対比判断において、主張の誤りはない。

第5  当裁判所の判断

1  取消事由1(本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との一致点の認定の誤り)について

(1)  「引用例1に記載された第1の考案」において、「シリンダボデイ27に対してノズルロツド16、16′が進退可能に装架され、ノズルロツド16、16′が水圧及び復帰スプリング18、18′により収納位置と洗浄位置に往復駆動されること」(審決書4頁15~19行)、「シリンダボデイ27がガイドプレート26に対して前後方向に移動可能に支持され、該シリンダボデイ27とガイドプレート27間にラツク28、ピニオン29、パルスモータ30からなるシリンダボデイ往復駆動手段が構成されていること」(同5頁12~16行)、「ラツク28、ピニオン29、パルスモータ30からなるシリンダボデイ往復駆動手段を手動により駆動して、押し出されたノズルロツド16、16′のノズル孔16a、16′aの位置を微調節できること」(同6頁5~9行)については、当事者間に争いがない。

しかるところ、原告らは、審決の「引用例1に記載された第1の考案」に係る認定のうちの「ノズルロッド16、16′のノズル孔16a、16′aを、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で前後方向に往復動し得るように」(審決書8頁6~8行)構成したとの認定部分につき、微調節位置におけるノズルロッド16、16′のノズル孔16a、16′aの往復動は、シリンダボディ27の往復動によって行われるものであって、該往復動の振幅は、ラック28とピニオン29の残余可動(噛合)範囲に限定されることになるため、基準となる微調節位置から前進側又は後退側に移動できない場合も生じるとして、誤りであると主張する。

しかしながら、往復動の振幅が、ラック28とピニオン29の残余可動(噛合)範囲に限定されることになるため、基準となる微調節位置から前進側又は後退側に移動できない場合として原告らが挙示する例は、引用例1(甲第4号証)の第1図における、図面上のシリンダボディ27のストローク長さBと、ラック28上にあるピニオン29の右下方向への残余可動(噛合)範囲の図面上の長さをそれぞれ計測して、これを比較した結果を根拠とするものであるが、特許出願の図面は、当業者が、出願に係る発明の技術的思想を理解し、発明の実施ができるようにするためのものであって、その程度において記載されれば足りるものであるから、例えば製品を製造する際に工作者等に指示を与えるために描かれる設計図のように、細部に至るまで正確に記載され、かつ寸法も記入されていなければならないものではない。引用例1(甲第4号証)の第1図は、特許出願に添付された図面であり、寸法も縮尺も記入されておらず、かつ、ピニオン29の歯形の描写等からみて、これが設計図でないことは明白であるから、その図面上の寸法を計測した結果を根拠とする前示の挙例は、具体的な根拠を欠いた意味のないものであって、到底採用できるものでない。そして、他に、往復動の振幅が、ラック28とピニオン29の残余可動(噛合)範囲に限定されることになるため、基準となる微調節位置から前進側又は後退側に移動できない場合があるとの原告らの主張の根拠は示されていない。

のみならず、引用例1(甲第4号証)には、「本発明は、使用者の体格に大巾な変動があったとしても、ノズルロツドの先端部に形成された孔から噴射された洗浄水が、必ず使用者の被洗浄部位に的中可能ならしめるようにすることを、その技術的課題とする。」(同号証2頁左上欄6~10行)、図面第1、第2図において、「導水口23に、・・・洗浄水が供給されると、当該水圧がピストン24を、Sだけストロークさせて肛門用ノズルロツド16を2点鎖線示位置(停止位置)迄、押し出し、しかる後に、バルブ本体22が開かれて、洗浄水が孔16aからβ方向に噴射され、肛門(イ)を洗浄する。ビデ(ロ)を洗浄するに際しては、パルスモータ30を駆動せしめて、シリンダボデイ27をBだけ便器1内方にストロークさせ、しかる後に、導水口23′に洗浄水が供給されると、ビデ用ノズルロツド16′がSだけストロークし、孔16′aから、洗浄水がβ′方向に噴射されて、ビデ(ロ)を洗浄する。このボデイ27をBだけストロークさせるに際し、ストローク量Bを使用者の体格に応じて適宜変更すれば、洗浄水を確実にビデ(ロ)に的中させることが出来る。肛門洗浄を行うに当っても、ボディ27を適宜ストロークさせれば、洗浄水を確実に肛門(イ)に的中させることが出来る。また、肛門洗浄およびビデ洗浄の際に、パルスモータ30を所定の周期でもつて往復回動させることにより、ボデイ25(注、「ボデイ27」の誤記と認められる。)を前後方向に往復動せしめることにより、被洗浄部位の範囲を拡大することも出来る」(同2頁右下欄8行~3頁左上欄12行)との各記載があり、これらの記載及び第1図の表示によれば、「引用例1に記載された第1の考案」は、洗浄水が供給されると、その水圧がピストンを距離Sだけストロークして、ノズルロッドを収納位置から洗浄位置まで押し出すノズルロッド往復駆動手段を備え、パルスモータを駆動してシリンダボディを使用者の体格に応じて適宜量変位させることにより、洗浄水を確実に局所に的中させることができるものであり、さらにパルスモータを所定の周期でもって往復回動させることによりシリンダボディを前後方向に往復動せしめて、被洗浄部位の範囲を拡大することができるものであると認められる。

そうであれば、被洗浄部位の範囲を拡大するための往復動において、その中心を、シリンダボディを使用者の体格に応じて適宜量変位させることにより洗浄水を確実に局所に的中させることができる位置、すなわち、微調節位置とすることは、ラックの寸法を該微調節位置を中心とする往復動が適切に行えるような長さにしておくことを含めて、該考案の機能・作用を奏するために当然になされるべき設計事項というべきである。

したがって、審決が、引用例1の記載に関し、「ノズルロツド16、16′のノズル孔16a、16′aが微調節した微調節位置を中心にして(洗浄水の噴射中にボデイを所定範囲内で往復動させるのであるから、微調節位置をはずして往復動させることは技術常識上有り得ず、往復動の中心が微調節位置であることは明らかであるものと認められる)所定の振幅で前後方向に往復動される・・・ことは明らかであるものと認められる」とし、「引用例1に記載された第1の考案」が、「ノズルロッド16、16′のノズル孔16a、16′aを、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で前後方向に往復動し得るように」構成したものとした認定に何ら誤りはなく、この認定に基づいて、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」とが、「ノズルロッドの噴出孔を、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で進退振動し得るように構成した衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構」である点において一致すると認定したことにも誤りはない。

(2)  また、原告らは、「引用例1に記載された第1の考案」においては、ノズルロツド16、16′を「肛門洗浄位置」まで突出させた後に、必要に応じてシリンダボデイ27をさらに「ビデ洗浄位置」まで突出させ、それぞれの位置での微調節位置の調整と往復動を行う構造のものであるのに対し、本願考案1は、ノズルロッド往復駆動手段とは独立したノズルシリンダ往復駆動手段によって微調節位置の調整と往復動を行わせる構造であるから、「引用例1に記載された第1の考案」の「ラツク28、ピニオン29、パルスモータ30からなる往復駆動手段」が、本願考案1の「ノズルシリンダ往復駆動手段」に相当するとの審決の認定は誤りであると主張する。

しかしながら、「引用例1に記載された第1の考案」が「ラツク28、ピニオン29、パルスモータ30からなるシリンダボデイ往復駆動手段」を備えることは、前示のとおり争いなく、さらに、引用例1には、図面第1、第2図において、「導水口23に、・・・洗浄水が供給されると、当該水圧がピストン24を、Sだけストロークさせて肛門用ノズルロツド16を2点鎖線示位置(停止位置)迄、押し出し、しかる後に、バルブ本体22が開かれて、洗浄水が孔16aからβ方向に噴射され、肛門(イ)を洗浄する。・・・肛門洗浄を行うに当っても、ボディ27を適宜ストロークさせれば、洗浄水を確実に肛門(イ)に的中させることが出来る。また、肛門洗浄・・・の際に、パルスモータ30を所定の周期でもつて往復回動させることにより、ボデイ27を前後方向に往復動せしめることにより、被洗浄部位の範囲を拡大することも出来る」ことが開示されていることも前示のとおりであるところ、ボディ27を適宜ストロークさせて洗浄水を確実に肛門(イ)に的中させること、ボディ27を前後方向に往復動せしめることは、ノズルロッド往復駆動手段とは独立したシリンダボディ(本願考案1のノズルシリンダに相当する。)往復駆動手段によって微調節位置の調整と往復動を行わせることであるから、本願考案のノズルロッド往復駆動手段とは独立したノズルシリンダ往復駆動手段によって洗浄位置(前示争いのない本願考案1の要旨のとおり、「洗浄位置」は限定されていない。)に係る微調節位置の調整と往復動を行わせる構造が開示されていることは明らかであり、したがって、「引用例1に記載された第1の考案」の「ラツク28、ピニオン29、パルスモータ30からなる往復駆動手段」が、本願考案1の「ノズルシリンダ往復駆動手段」に相当するとの審決の認定に何ら誤りはなく、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」とが、「ノズルシリンダ往復駆動手段を手動により駆動し、突出したノズルロッドの噴出孔の位置を微調節」する点において一致すると認定したことにも誤りはない。

(3)  そうすると、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との一致点の認定に、原告ら主張の誤りはない。

2  取消事由2(本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との相違点(1)についての判断の誤り)について

原告らは、引用例2記載の考案が、洗浄等の各機能をシーケンス制御したものにすぎず、本願考案1のような、ノズルロッド往復駆動手段及びノズルシリンダ往復駆動手段を有するとともに、ノズルシリンダ往復駆動手段を中央制御回路より出力される制御信号によって駆動する構成のものとは異なっており、本願考案1と同様の機能を有するものでもなく、同様の作用効果を生じるものでもないから、引用例2記載の考案を、単純に「引用例1に記載された第1の考案」に適用しても、本願考案1を構成することはできないと主張する。

しかしながら、審決が、相違点(1)についての判断に当たって、引用例2に、往復駆動手段の駆動を中央制御回路を介して行う構成が開示されていることを認定し、この構成を、「引用例1に記載された第1の考案」のノズルシリンダ往復駆動手段の駆動に適用したものであって、引用例2記載の考案が、本願考案1のような、ノズルロッド往復駆動手段及びノズルシリンダ往復駆動手段を有するとともに、ノズルシリンダ往復駆動手段を中央制御回路より出力される制御信号によって駆動する構成のものであり、本願考案1と同様の機能、作用効果を有するものと認定したものではなく、引用例2記載の考案の全構成を単純に「引用例1に記載された第1の考案」に適用したものでもないことは、審決の記載(審決書14頁13行~16頁17行)上明白である。また、「引用例1に記載された第1の考案」が、「ノズルシリンダに対してノズルロッドを摺動自在に内挿し、ノズルロッド往復駆動手段を介して該ノズルロッドを収納位置と洗浄位置に出退変位する構造にすると共に、該ノズルシリンダを支持ブラケットに対して軸方向へ摺動自在に支承し、該ノズルシリンダと支持ブラケット間にノズルシリンダ往復駆動手段を構成し、該ノズルシリンダ往復駆動手段を手動により駆動し、突出したノズルロッドの噴出孔の位置を微調節し、該ノズルロッドの噴出孔を、前記微調節した微調節位置を中心にして所定の振幅で進退振動し得るように構成した衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構」(審決書13頁9行~14頁3行)である点において本願考案1と一致する(該一致点の認定に原告ら主張の誤りがないことは前示のとおりである。)以上、引用例2記載の考案が、本願考案1のような、ノズルロッド往復駆動手段及びノズルシリンダ往復駆動手段を有するとともに、ノズルシリンダ往復駆動手段を中央制御回路より出力される制御信号によって駆動する構成のものであるとか、本願考案1と同様の機能、作用効果を有する等との認定をする必要がないことも明らかである。

したがって、原告らの前示主張は、その前提において既に失当といわざるを得ない。

そして、引用例2に、(a)「洗浄ノズル13には、洗浄ノズル13を本体20に対して摺動自在に保持させ、モータM1によりベルト7、及びプーリ5、6を介して進退させるチヤーム機能部4を有する」(審決書10頁6~9行)、(b)「マイクロコンピユータによる制御部29は、入出力部27、演算部26、及びメモリ部25とから成る。入出力部27は・・・自動操作キー部21と個別操作キー部22とに電気的に接続される」(同頁13~17行)、(c)「個別操作キー部22の・・・押圧により生じる電気信号で・・・記憶部25に記憶されている各機能部15、3、4の駆動手順が読み出される。これにより・・・各機能部15、3、4が、夫々付勢される」(同10頁17行~11頁2行)、(d)「自動操作キー部21のキー・・・を押圧することによる電気信号によつて・・・記憶部25に記憶されている各機能部15、3、4の駆動手順及び駆動時間が読み出される。これにより・・・各機能部15、3、4に対する付勢信号が、駆動手順に従つて駆動時間の間だけ出力される」(同11頁3~9行)との各記載があり、「チヤーム機能部4を介して該洗浄ノズル13を本体20内位置とシヤワー位置に進退変位する構造にすると共に、該チヤーム機能部4を制御部29を介して個別操作キー部22又は自動操作キー部21により駆動し得るように構成した自動式局部洗浄装置の洗浄ノズル駆動機構を構成とする考案」(同頁15行~12頁2行)が記載されていることは当事者間に争いがなく、このことと、引用例2(甲第5号証)の前示(a)の争いのない記載を含む「第1図に図示したように、自動式局部洗浄装置は、本体20とコントロールパネル30とから成る。本体20は、第2図に図示したように、便器12と、・・・洗浄水を放出する洗浄ノズル13と、洗浄水を貯えるシスターン14とを具備する。シスターン14と洗浄ノズル13とを結ぶ通路には洗浄機能部15が配設されている。洗浄機能部15には、第6図に図示したように、洗浄ノズル13へ洗浄水を圧送する電動ポンプ18と、・・・を有する。又、第6図(第7図の誤記と認められる。)に図示したように、洗浄ノズル13には、洗浄ノズル13を本体20に対して摺動自在に保持させ、モータM1によりベルト7、及びプーリ5・6を介して進退させるチャーム機能部4を有する。」(同号証2頁左上欄末行~右上欄15行)との記載及び第1、第2、第6、第7図の表示によれば、引用例2に記載された考案の「自動式局部洗浄装置」、「洗浄ノズル13」、「チヤーム機能部4」、「制御部29」が、それぞれ本願考案1の「衛生洗浄装置」、「ノズルロッド」、「ノズルロッド往復駆動手段」、「中央制御回路」に相当するものであることは極めて明白であり、したがって、衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構に関する考案が記載された引用例2に、洗浄ノズル13に係るものとして、往復駆動手段の駆動を中央制御回路を介して行う構成が開示されていることも明らかである。

そうであれば、審決が認定するとおり、種々の技術分野において、駆動手段の駆動を中央制御回路を介して行うようにすることが、本願出願当時通常のありふれた技術的事項であり、かつ、「引用例1に記載された第1の考案」も、引用例2記載の考案も、いずれも衛生洗浄装置の噴射ノズル駆動機構に関するものであって技術分野を同じくするとの事情の下において、引用例2に開示された往復駆動手段の駆動を中央制御回路を介して行う構成を、「引用例1に記載された第1の考案」に適用して、そのノズルシリンダ(シリンダボディ)往復駆動手段を中央制御回路を介して駆動するようにすることは、当業者が極めて容易になし得ることと認められ、かつ、前示相違点(1)に係る本願考案1の効果が「引用例1に記載された第1の考案」及び引用例2記載の考案の各効果の総和以上の格別なものと認めることもできない。

なお、原告らは、同一の技術分野に属するものであっても、それぞれの技術において、独自の制御方法、駆動方法に基づいて中央制御回路を構成し、それによって、先行技術に比較して優れた機能や作用効果を発生させるような技術を開発することは、技術の発展・進歩を促すうえで重要な意義を有するものであり、単純に用語上の同一性からその技術内容も同一であるとしたり、選択の余地のない単なる設計事項であるとしたり、本願考案1の効果が引用例1及び引用例2に記載された考案の各効果の総和以上の格別なものは認められないと判断することは、短絡的発想であって、誤りであるとも主張するが、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との相違点(1)についての審決の判断に対する取消事由の主張としては、具体性を著しく欠くものであって、失当といわざるを得ない。

したがって、本願考案1と「引用例1に記載された第1の考案」との相違点(1)についての審決の判断に、原告ら主張の誤りはない。

3  取消事由3(本願考案2、3と「引用例1に記載された第2の考案」及び「引用例1に記載された第3の考案」との対比判断の誤り)について

原告らの取消事由3に係る主張は、畢竟、本願考案1が引用例1、2に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたとの審決の判断に、取消事由1、2に係る違法があることを前提として、本願考案1をさらに限定した構成からなる本願考案2、及び本願考案2をさらに限定した構成からなる本願考案3にもこれと同一の違法があるとし、本願考案2、3が引用例1、2に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたとの審決の判断の違法事由として主張するものと解されるところ、審決に該取消事由1、2に係る誤りがないことは上如のとおりであるから、取消事由3に係る誤りがないことも明白である。

4  以上のとおりであるから、原告ら主張の審決取消事由は理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

よって、原告らの請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条1項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

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